午前二時の居酒屋は異次元にもっとも近い。
リーダー「やっぱり『ドクターストレンジ』は3Dで観て正解だったねえ」
ぢゅん「うん、まるで、エッシャーの絵に入り込んだみたいでドキドキした!ドクターストレンジ最高ー!!」
ミノ「なぜCMに使われることを意識したコメントなの」
相場「俺もいつ、”これはすべて、ストレンジが死の直前に見た幻覚だったのだ”オチが来るのかって、ドキドキしちゃったよね!」
ぢゅん「ん…?」
櫻丼「ん…?相場くん、ずっとそんなこと考えて観てたの?」
相場「絶対にそういうオチが来ると思ってたんだけど。大手術って全身麻酔の影響で幻覚体験をする人が結構いるんだよ。うちのじいちゃんも見たことあるって」
櫻丼「いや、それ絶対ラストで恋人のクリスティーンが泣きながらストレンジ先生を脳死判定して、「医者の道以外にも人を救う方法はあるのよ…」って言いながらドナー提供に同意するやつじゃん。そんなクロックワークス配給っぽいマーベル作品嫌だよ」
相場「エンシェント・ワンに飲まされたお茶にシャーマンの儀式で使うアヤワスカ的成分が混入されてて、あそこから先は全部ストレンジ先生の幻覚っていう線も俺はまだ諦めてないけどね」
櫻丼「諦めてないってなに。それ絶対ラストで現実のストレンジ先生は精神病棟にいるやつじゃん。そんなアルバトロス配給っぽいマーベル作品嫌だよ」
ミノ「いや、ゲロ吐いてるシーンがなかったからアヤワスカじゃないと思う。アヤワスカは飲んだあとめっちゃゲロ吐くから」
ぢゅん「とろろ焼き食べてる時にゲロの話やめてくんない?サイケっぽいシーンは確かにあったけどね」
櫻丼「原作には60〜70年代のニューエイジやニューサイエンス思想が色濃く反映されているみたいだからな」
ミノ「ふーん、精神世界的なやつ?だいたいHPのデザインがライトグリーンになりがちなやつ?」
櫻丼「言葉の意味が広いからね。俺も厳密な定義はわからないけど、それまでの数学とか科学って、主観を排した観測や証明が重要だったところに、いやいや、世界はそんな客観的に絶対なものじゃないんじゃないか、世界の全てはグラデーションのよう連続していて、だから主観が観測に影響を与えたり、物質に影響を与えることもあるんじゃないか、っていう主張をしたところに発想の転換があったんじゃないかな」
相場「…つまり?」
櫻丼「えっとつまり…魂は世界と繋がってて…全ての物質は…離散的に存在しているのではなく…究極的には…俺と相場くんも繋がっているということなんだ…」
相場「きもっ!」
櫻丼「…」
ぢゅん「俺はニューエイジって言われたら音楽だなあ。タンジェリンドリームとか。エンドロールでかかっていた曲、それっぽくて良かった」
ミノ「一時は「全映画音楽ハンスジマー化現象」とかいわれたからね」
ぢゅん「それはミノが言ってるだけのやつ」
ミノ「マーベルの音楽が印象に残らない理由なんて記事は本当にあったんだよ。でも今回のストレンジの音楽は結構遊んでいる感じがあったよ」
ぢゅん「プログレッシブロックを土台に、エレクトリック・チターとストリングスの中近東っぽい音階でエキゾチック感を出したかと思えば、ハープシコードでバロックになだれ込むという…ほとんどギャグかな?みたいな」
ミノ「トリップシーンとか、コーラスのテープ逆戻しっぽい感じがあったりしていかにもアナログな音響派感があったり。なんか楽しんで作ってそう」
相場「そんなことよりもっと戦闘シーンを語ろうよ。一番すごかったのはやっぱり戦闘シーンだよ」
ぢゅん「床のタイルが自己相似的に増殖していくのが不気味カッコよくて好きだな」
相場「わかる〜超細かいよね〜俺があのCG作ってる会社で働いている人だったら作ってる途中で絶対ゲロってる!!」
ぢゅん「ゲロから離れない?」
相場「俺の千葉の実家の近くにもああいう幾何学模様の塗装ブロックがあるから、通るたびに異次元への入り口が出現しそうでわくわくしちゃうね」
櫻丼「フラクタル模様の多用は意図的だね。どこまでも同じパターンを繰り返すことで「無限」に描くことができるという…」
相場「まって…千葉の名産品のピーナッツ…これってインフィニティ(∞)の形じゃん…」
ミノ「千葉にサンクタム絶対ないから安心して」
ぢゅん「戦闘シーンの話は?俺は精神世界的な戦いっていうわりには普通に肉弾戦だったのはわらった」
相場「でも最後のはちゃんとトンチで勝負したじゃん」
ミノ「トンチ…」
櫻丼「フラクタルトンチ…」
相場「デュマームゥみたいなやつは諦め早すぎると思ったけど」
ミノ「ああ、デュンワデュマーンもうちょっとミステリアスでもよかったかも」
櫻丼「最後ちゃんと約束守ってたし意外と律儀だったなドーィミャモゥ…」
ぢゅん「それ言いたいだけになってる。確かに高次元の存在にしては分かりやすい悪役って感じだったね」
相場「ストレンジ先生が急にあのヒゲのフォルムにしよう!って思い立った動機の方がよっぽどミステリアスだよね」
ミノ「それはメタ的な理由だから…」
ぢゅん「配給はロマンス要素も推してたらしいけど?」
ミノ「うん、マント、いじらしかったよね」
ぢゅん「マントじゃなくてクリスティーンとのロマンスだと思うんだ」
ミノ「クリスティーンは恋人じゃなくてママだものあれ。あのキャラ造形に一番近いのクレヨンしんちゃんのみさえだもの。「オラ不思議な力で暗黒軍団と戦うんだゾ!」「はいはい、あんたカルトに入信したのね」って感じだった」
櫻丼「随分物分かりのいいみさえだな」
ミノ「モップが倒れて「キャー!」ってとことか完全にリアクションがみさえだったもんね」
ぢゅん「全体的に出てくる人たちがみんな物分かりよかった。俺だったらあんなに素直にエンシェント・ワンのこと信じられないなあ。ヨーダぐらいキナ臭くない?」
櫻丼「ヨーダってキナ臭いの?」
ぢゅん「より偉大な善をなすためには陰をも己に取り込む、っていうのも分かんなくはないけどさ、ショック受ける弟子のモルドの気持ちちょっと分かっちゃうな」
ミノ「ああ、ぢゅんくんは魂が硬いから」
相場「そうね。ちょっとね。ちょっと魂が硬いね」
ぢゅん「なんかすごいやだそれ。魂が硬いって言われるのなんかすごいやだ」
櫻丼「ところでリーダーはいつから寝てるの?」
ミノ「いや、その人は寝ていない。一時的に魂が体を離れているだけだ」
櫻丼「もっとダメじゃん。起きてリーダー」
リーダー「はっ」
櫻丼「いつから寝てた?」
リーダー「え?寝てないよ。いやあ、やっぱり『ドクターストレンジ』は3Dで観て正解だったねえ」
ぢゅん「うん、まるで、エッシャーの絵に入り込んだみたいでドキドキした!ドクターストレンジ最高ー!!」
ミノ「なぜCMに……ん?」
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