嵐とみる『DUNE/デューン 砂の惑星』

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不穏な予知夢を見るひと。

相場「没入感すごかったね。上映時間の長さに備えて喉カラカラの状態で挑んだから、とにかく砂漠の臨場感がすごかったわ」

櫻丼「相場くんひとりで4DX的な体験してるね」

ミノ「最近の大作映画長すぎるんだよ。もっと短くできるだろ……って思う事多いけど、正直これは時間が長いことに意味があったな。驚くほどドローン・アンビエント作品だったもん」

ぢゅん「確かにわざと引き延ばしている感はあったよな」

ミノ「いや俺はめっちゃ興奮したから。だって、なんかちょっとシリアスなスターウォーズ路線でいくのかな?とか思っていたら、まさかこんな大きな画面で155分ずっとはちゃめちゃ金のかかった高画質環境映像を見ながらSunn O))) みたいな音楽を爆音で感じつつなんとなく哲学的なポエジーを繰り返し聞くだけの体験ができるとは思っていなくて」

櫻丼「褒めてんのかそれは」

ミノ「褒めてるだろ!!7時間でも見れるよ俺はあれを。真面目な話、「引き延ばす」というか、「遅さ」っていうのはひとつのモチーフになっていると思うんだよね。遅くすることでカタルシスに達しないようにしている」

櫻丼「そういえば、ティモシーシャラメのルックスってちょと何歳か分かんないというか、性的魅力があるようにも見えるけど、成熟していない子供のようにも見える。そこにネオテニー思想を見出すとすれば、確かに「遅さ」っていうはモチーフになっているかもしれない。けど、そこまで禁欲的になる意図がいまいちわからないんだよな」

ぢゅん「砂虫が来るから人工的なリズムを作ってはいけない、っていうのは作中の設定で出てくるわけで、つまりインダストリアルなリズムでEDM的なエクスタシーを感じるのは悪だって姿勢を感じなくもないけど、いやでもそこは普通に盛り上がっちゃだめなのか?」

ミノ「意思をもってして運命を切り開くのが人間であるっていう像から脱して、単に「粒子と振動」としての人間を描こうとしているとか。気候変動とか利権争いみたいなテーマも現代的な批評として描くことを何故か放棄しているし、覇権争いとかの本筋の人間ドラマが織りなす奥行さえ全部平面的に圧縮してしまっているのは、そういう人間の営みさえある視点から見れば幾何学模様でしかないという」

ぢゅん「ほんとうにそうか?単にドラマを描くのが不得手なんじゃなくて?あと予知夢のインサートだけ妙にちょっとしつこくない?もうわかったよ!ってなる」

ミノ「ミニマリズムの極意は反復だろ!!反復しながら少しずつ変容していくっていう、スティーブ・ライヒ的なアレだろ!!」

相場「適当に言ってるでしょ」

櫻丼「語られるべきことを語らない代わりに余白に時間を使っていたし、あまり「ドラマ」をやろうとしている感じがなかったのは確かなんだよな。映像も、画を撮っているというよりは、空間を撮っているという風に見えたし。それこそアンビエントだけど…」

ぢゅん「現代的な批評性がないっていう部分は気になる」

ミノ「あるとすれば、「原生自然ポルノから目覚めよ」、っていうか、『アバター』とか『ヴァレリアン』とかがイメージするような「美しい自然」みたいなフロンティアはもうファンタジーでしかないんだから、むしろ人間のほうが自然に合わせて身体を変容…青い目になったり…させていくしかないっていうエコロジーの描き方は現代的になりえると思ったよ。まあ第二章次第かもだけど」

櫻丼「環境をひたすら過酷に描いていたところは良かったかもね。でも第二章の方が内容的には心配だよ。このままいけば「人工的に作られた白人の救世主」がジハードを率いるという筋なわけで。難しそうだ」

相場「その前にちゃんと続編って作られるのかな?俺たちの戦いは始まったばかりだ!って最後の画面の柱に「デュニ先生の次回作にご期待ください!」って一瞬見えたような気がしたけど大丈夫?連載続く?みんな巻末アンケート送ってる?」

櫻丼「あと気になるのはスパイスの作用を使って拡張された思考の力っていうのが今後どう描かれるのかだね。スパイスって原作の時代的にも明らかにLSDだけど、 デュニ 版にはトリッピーな感じはないんだよね、どちらかといえばオカルト」

ぢゅん「タロット占いとかに精通しているガチな人であるホドロフスキー版の構想の雰囲気とは違うとこだよねそこは。でも、意外とリンチ版の『DUNE』も後半はただのドンパチっぽくなっちゃってた気がした」

櫻丼「どうしても尺が足りてないのよ。それでも、「昔の男って話が早いなあ、悪い意味で」っていうので大分ストーリー短縮できている部分はあるんだけど、現代版じゃそれもできないしな。ハルコネン男爵の気色悪さとかはリンチ版の方が俗っぽいゆえの恐ろしさがあって俺は好きなんだけど。今回オスカーアイザックが急に裸にされていたのは、リンチ版のスティングの半裸を舐めるように見るショットにあった妖しさのオマージュだろうか」

ミノ「まあなんか全年齢にするための企業努力はそこかしこに感じたよな」

ぢゅん「リンチ版の男爵にあったユーモアがないのは残念かな。ていうか、全体的にヴィルヌーヴの映画は間抜けにならないように最新の注意を払ってるって感じがして。俺はもっとトンチキでもいいと思うんだよなSFは」

相場「え?でもクソデカ羅生門的なおもしろさあったよ?なんかいちいち建物とか虫とか音とか全部クソデカいのうけたじゃん」

ミノ「それで笑ってるの相場さんだけだからどう考えても」

櫻丼「てかリーダーはまたずっと寝てたでしょ」

リーダー「あ、なんかパート1の興行成績がふるわなかったのでテコ入れが入って妙に丸く収めようとした感じのふんわりラストになる予知夢見てたわ」

ミノ「やめろよ…」