ついにリーダーはフォースの霊体となってしまうのか…?
櫻丼「ついに観てしまったな、『最後のジェダイ』」
ミノ「泣いたわ〜」
相場「泣いたわ〜」
ぢゅん「あれ意外、相場くんは「へんな生き物がいっぱいで楽しかった!」ってくると思った」
相場「いやぢゅんくん俺のこと小学生だと思いすぎでしょ。俺だって「コアラのマーチに眉毛コアラが入ってなかったから悔しい」以外のことで泣くことだってあるから」
櫻丼「そんなことで泣いてるの…。それで相場くんはどのシーンで泣いたの?」
相場「まずカイロレンがスノークに「その馬鹿げたマスクを取れ」って言われるところでしょ」
ぢゅん「は?」
相場「あのさ、基本的にみんなすぐ「そんなマスクしてると殺したくなる」とか「そんなマスクは必要ない」とかカイロレンに言うじゃん。ちょっとでもそれ言われたときのカイロレンの気持ちを考えたことある?って思うわけ。ちゃんとデザイン画から起こして、あの狭い隙間にボイスモジュレーターをどう組み込むかまで考えて作ってるんだよ。夜な夜なはんだ付けしたんだよ一人で。嘘でも誰か褒めてあげたってよくない?しまいにはお師匠様にまで「馬鹿げたマスク」とか言われてさ…エレベーターで泣きそうな顔で折角頑張って作ったマスク壊してるカイロレン見てたらもうかわいそうすぎて…」
櫻丼「逆に優しさが刺さるからやめたげて…そういう感じで言うの…」
ミノ「でもマスク壊しちゃったのちょっともったいなかったよな。制作パーツを銀河秋月電子通商で買ったのをファーストオーダーの経費で落としてるのがハックス将軍にバレてめっちゃ怒られたりしながら作ったのにな」
ぢゅん「そんなシーンあったっけ…」
ミノ「でも俺カイロレンがまだあの感じだったのは嬉しかったよ。EP8ではストーンローゼスとプライマルスクリーム聴いてるカイロレンぐらいになっちゃってるかと思ってたけど、まだBring Me The Horizonとデフトーンズ聴いてるカイロレンだった」
櫻丼「君がなにを言っているのかよくわからないが、確かにカイロレンはEP7とそんなに印象変わってなかったね。むしろハックス将軍が前作と印象が違ったというか、あんなコミックレリーフっぽかったっけ、と思ったけど」
ミノ「ハックス将軍もだいぶセルアウトしたよな。俺は今回の面白キャラ将軍のほうが前作より断然好きだけど、イケメン俳優の庇護者ぢゅんくん的にはどうなの?」
ぢゅん「というか被虐系俳優ドーナルグリーソンのお家芸って感じだったよね。でも、ただの人形かと思って虐めていたら意志のある人間だった…と、ある瞬間に相手に気づかせてぎょっとさせる、っていうのがドーナルグリーソンの深みだと思うんだよな。このままただのごますり小物キャラに終わるのはもったいないから、次作ではなにかやってくれるのに期待してる。まあ最後のカイロレンへの視線残しにその片鱗を感じたけどね」
ミノ「ライアンジョンソンとJJのリレー小説みたなことになっているから、お互いのキャラ解釈の違いを垣間みれる感じで面白いよな。まあ映画は監督だけで作っているわけではないけどさ。それにしても作風の違いは感じた。端的にいうと、JJよりライアンのスターウォーズのほうが「画面がエロいな…」って思った」
相場「カイロレンのおっぱい映るから?」
ミノ「ちげえよ。確かに妙に肌をぬらぬらさせて撮るな、とは思ったけど」
ぢゅん「それはアダムドライバー自体が水分含有率の高い俳優だから仕方ない」
ミノ「その、レイとカイロレンがフォースボンドで繋がっちゃうって話でさ、それでお互いが手を触れ合う瞬間があるじゃない。銀河のみなしごのようなふたりの、秘密の逢いびきが「大人」に見つかってしまう…という感じにしているんだよね。焚き火に赤く照らされたふたりをショッキングなぐらい背徳的に映しているなと」
櫻丼「レイはともかくカイロレンはみなしごじゃないじゃん」
ミノ「だってカイロレンはスクリーモがやりたいのに、親は伝説のブルーグラスギタリストであるルーク・スカイウォーカーに彼を託すんだよ?それはもう親には彼が見えてない、みなしごってことじゃん」
櫻丼「正直さっきから例えが一個もピンとこないんだけど…まあでもあそこのシーンのカイロレンの手袋の脱ぎ方とか、おずおず手を差し出す感じとか、じっとりした感じで撮ってるなっていうのは俺も思ったよ。あとなんか倒れている時のファズマが妙にエロく見えたんだよな。なんかこう、太ももの感じとか…」
ミノ「いや今回ね、これを観た子供達がなにかよく分からないモンモンとしたものを感じてしまいそうだなってシーンがいくつかあったよね。それって良いことだとおもうけど」
相場「貘のエイリアンみたいなやつの母乳をレイに見せつけるように飲むルークのシーンとかでしょ?」
ぢゅん「そこ?ていうか、映画全体がモンモンとした雰囲気なんだよな。気持ち良く発射できず、ただじりじりと後退する艦隊、じわじわと人だけが死んでいく…」
櫻丼「モンモンだね。そういえば俺、レイとカイロのシーンだけじゃなく、手が触れるシーン全般にそれぞれ性的…というか、ある種のロマンチックな雰囲気があったような気がする。眠っているレイアに手を触れるポーにしても、レイアとホルドが別れ際に手を握るシーンにしても。それで、最近の大作映画には「あえてロマンスを描かない」という潮流があったと思うんだけど、ラストジェダイの面白いのは逆に「全ての関係性をロマンスのように描いている」ところかなと」
ぢゅん「そうだね。成立しないロマンスはない、という」
相場「カイロレンは最終的にフラれていたけどね」
ミノ「涙目で”please…”と言いながらレイに手を差し伸べたのに、フラれた途端「女絶対殺すマン」になるあたりが期待通りのカイロレンだった。本当にカイロレンだけはぶれないな。ぶれているところがぶれない」
櫻丼「あと今回キャラ解釈で面白かったのは、フライボーイとしてのポーの描き方かな。『フォースの覚醒』では戦場のヒーローだったのに、戦争のやり方が変われば途端に厄介者になる。今回彼にライトを当てる角度を変えたことで、途端に衝動的なアドレナリンフリークの部分が見えてきたわけだ」
相場「冒頭でハックス将軍をイジメてるのも面白かったな」
ぢゅん「『エクスマキナ』再びかという」
ミノ「あれもポーがハックスをイジメる映画だよね。(※1)ところであそこでポーが、「レイア将軍からハグス将軍へ伝言だ。彼の母親の件について…」と煽るわけだけど、ノベライズ(※2)の設定によると、将軍のお父さんって帝国アカデミーの司令官だったんだけど、ハックスってのはそのお父さんと女中の間に産まれた私生児だったらしいんだな」
ぢゅん「なるほど、単に「お前の母ちゃんデベソ」って言う以上に、プライドの高いハックスとっては癪に触る話題なんだね。でも、ノベライズ読んだ人にしか分からない旨味成分入れないでほしいなあ…」
ミノ「まあとにかくそういう仄暗さ、後ろめたさ、恥の感覚、端々にちょっとある不道徳な雰囲気、っていうのが特徴的だった」
櫻丼「シリアスになるとは予想していたけどあの感じは意外だった。衝撃のスターウォーズ、っていうのがキャッチコピーになってたが、それがひとつの大きなどんでん返し的なものじゃなくて、観客の5秒先の読みを裏切る脚本の「小さな裏切り」がひとつひとつ積み上がっていって、最終的に思いもよらなかった地点に連れてこられているっていうのが良かったね」
ぢゅん「俺的に一番の衝撃は「最高指導者カイロレン」という激やばワードが爆誕してしまったことだけど…」
櫻丼「部下もよく真顔で言えるよな。スノークがいなくなった今、あのレンとハックスのふたりで本当に組織回せるのか?」
相場「でも、レジスタンスも主要なリーダーがほとんど死んじゃって、若い人しか残ってないじゃん」
ミノ「うん、いろんな意味で世代交代を感じさせる映画だったね。プロットの上でも、そしてSWファンダム上でも。スノークをあっさり殺したところにもその表れがあったと思う。スノークの正体やその陰謀については、今回、ファンの中でも最大関心事項だったから、インターネットでは様々な「スノーク・セオリー」が生まれてファン同士で議論が起こっていたわけだけど、ライアン監督はそんな彼をあっさり殺した。だって、スノークの正体を知って喜ぶのは議論好きな旧作オタクだけだからね。ストーリーを前進させるのに寄与しないと判断した要素に対して、「一応オチをつける」とかやらず、きっぱり「描かない」をやったところが今作の美しさだったと思う」
櫻丼「ファンサービスよりもデベロップメントがやりたかったんだね」
ミノ「うん、だから俺、普通だったらシリーズものを見るときって、「昔からのファンでよかった」とか、「昔からのファンのほうがより楽しめる」って思ってしまうんだけど、今回ばかりは、なんだか自分が旧作のオタクであること自体がちょっと悔しいと思ってしまった…」
櫻丼「まあまあ、別に、「旧作オタク全員死ね」って言っているわけじゃないでしょう。ただ、ここからはもう、「君たちだけ」に送るスターウォーズではないですよ、っていう宣言にはとれたけどね。でも、ルークをずっと応援してきたファンにとってもプレゼントのようなラストだったと思うな。彼がやっと主人公という業から解き放たれた感もあり」
ミノ「今その業を背負っているのはカイロレンだよね。主人公の業ならぬヴィランの業。彼が両親を憎んではいないと明言するのにそれでも殺さなくてはならない理由、それは彼がヴィランであるから。彼はヴィランのなすべきことをわかっているのだ」
ぢゅん「んなメタな。『ファニーゲーム』じゃないんだから」
ミノ「でも、『ローグワン』にもこういうテンションがあったと思うんだ。登場人物は物語のコマである、ということそのもののドラマというかな。彼らはゲームのルールを知っている。ある者は斜めのマスに進め、ある者は前進するしかない。宙を仰ぎ、見えざる手に問う。「これは誰のゲームなのか」と…」
ぢゅん「今回カイロレンは自分のヴィランとしてのプロットをいわば白紙に戻したようにも見えるね。彼はここからどんなヴィランにもなれるし、これを引き継ぐJJの腕がなっているんじゃないのかな。そういえば、レイの出自についてもファン・セオリーがいろいろ出ていたけど、結局ああいうオチにしたっていうのが勇気あるよな。スターウォーズはスカイウォーカーの血筋の話から脱したんだね」
櫻丼「しかしあの真相を知った後にEP7を見返したときのツラさといったらないよ…。レイは自分の両親の死体がその辺に埋まっているのを心の奥では知りながら、「いつか本当の両親が迎えにくるから」というストーリーによって心を守っているわけだけど、いつしかそれにとらわれすぎて自分の人生を歩めなくなってしまう。ジャクーを飛び出していきたいのに、「いつか帰ってくるはずの両親」という自分で作った幻想に足首を掴まれてそれができない…。随分sickな話にしてくれるじゃんライアン監督…」
ぢゅん「そんなストーリーに閉じこもっているレイの目を開かせたのもまたカイロレンであったわけじゃん。「お前の両親はクズで、お前は捨てられた。だからお前は何者でもない。でも俺にとっては違う」と。レイがこの文脈で何者でもない存在だった世界というのは今までのスターウォーズのことだよね。スカイウォーカーの血に選ばれていないレイ。でも新世代のスターウォーズの主人公であるカイロにとってはレイには意味がある。ここでパラダイムシフトが起きてる」
ミノ「そいでさ、ルークが最後「わたしは最後のジェダイではない」っていうの、最初はレイのことを言っているのかと思うんだけど、実はそれだけじゃなかったんだよね。ラストカットで映るカントバイトの少年もそうで、きっと銀河のどこかに未来のジェダイがたくさんいるわけだ。カイロレンとレイは銀河でふたりだけのモンスター、ではない」
櫻丼「スターウォーズはその中心を手放すことによって、「ストーリー」から「ナラティブ」になったのかもしれない。戦争は大きな物語ではなく、成功は失敗の間にあり、愛にはデフォルトがなく、奇跡は点在しているもので、俺たちの周りにもあるのかもしれない」
相場「驚いたな、お前の今言ったことは、すべて間違っている」
櫻丼「えっ」
相場「え?いやあのルークのセリフ好きだったなとふいに思って」
櫻丼「そ、そうかびっくりした。結構シリアスに語ったのにめちゃ全否定するじゃんと思ったわ…」
相場「あと、ファズマとフィンの「お前はスカムだ」「レベルスカムさ」ていうのもかっこよかった。ていうか今回名ゼリフ500個ぐらい出てた気がする」
ミノ「レイアの「髪型を変えたの」もよかったな。俺は、旧作のころからルークもレイアもソロも好きだったけど、正直ここまでレイア…というかキャリーフィッシャーという人が美しくて聡明で強い人だったと知らなかった。だから彼女がいなくなってしまってすごく悲しいけど、でも最後にルークと再会するのが見られてよかったと思う」
櫻丼「本当にそうだね…俺はレイアが「May the force…」をホルドに譲るところのセリフも好きだったな」
ぢゅん「俺はポーグの鳴き声が好きだった」
櫻丼「それセリフか?」
ぢゅん「ていうか観る前は個人的にポーグが不安だったんだけど、観てみたらポーグの存在って、その鳴き声が惑星オクトーの世界観を表わすサウンドスケープとして機能してるんだって分かったからさ。グッズ売るためのキャラ出したかっただけかとおもっていたから」
ミノ「リーダーは好きなセリフあった?」
地念「DJの「maybe…」が好きらしいです」
相場「……え!!急に誰?!」
地念「地念です。今日はリーダーの代理で来ました。座っているだけでいいと言われたので」
櫻丼「確かにいつも基本的には寝てるだけだけどそんなのありかよ?」
地念「はい、とにかくここに誰かが座っていればリーダーとしての役目は果たせるのではないかと思いついたんだそうです」
相場「いやでも本物のリーダーがいないと意味ないよ!」
地念「でもここまでちゃんと場が回ってましたよね?」
ぢゅん「いや…たしかに気付かなかった俺たちもどうなんだよ…でも…でもやっぱりリーダーじゃなきゃだめなんだ…リーダーがいないとしまらないよ…!!」
地念「大丈夫です、リーダーは実体はなくともあなたのそばにいます」
櫻丼「フォースの霊体になったみたいな言い方やめて。それでリーダー今どこにいるの?」
地念「彼は海へ出ています。精神の修行のために…」
ミノ「釣りだな…」
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