嵐とみる『ブラックパンサー』

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リーダーは二度死ぬ

相場「ブラパン、レイトショーなのに結構混んでたね」

ミノ「アメリカでの高評価が伝わってきてる感あるよな、ブラック&パンスァー」

ぢゅん「ブラックパンサーね。ていうか、略さなくても十分短いだろ」

ミノ「8音もあったら上句に入らないじゃん。ブラパンならいけるから」

相場「ブラパンや 強さの秘訣 ちゃおちゅ〜る……詠める!!!!」

ぢゅん「季語が入ってないじゃん」

櫻丼「いや季語とかの前にナチュラルに嘘言うのやめて。陛下猫じゃねえし」

相場「そうだった。ブラックパンサーの強さの秘訣はちゃおちゅ〜るじゃなくて合法ハーブだった…」

櫻丼「言い方ね」

ミノ 「いやでもあれウィードはウィードじゃん。トリップなシーンもあるしね。キリスト教の保守的なところとか、今はドラッグや酒を禁じてる宗教も多い反面、世界には元々大麻を神聖なものとする宗教ってのも結構あったわけだよね」

ぢゅん「レゲエに象徴されるラスタとかそうだよね。ガンジャは神聖なもので心をユニバースと繋げる的な」

相場「なるほど、渋谷によくいるヘンプTシャツを着ている人たちはラスタの思想を重んじていたのか。ただ大麻が好きな人たちなんだと思ってたよ」

ミノ「それはただ大麻が好きな人たちである可能性が十分にあるぞ」

櫻丼「ラスタって、奴隷として強制的にジャマイカに連れてこられた人たちの、「我々の本来いる場所はここではない」って思いの中で生まれたところがあって、彼らにとってはアフリカこそがザイオン、いつかアフリカという約束の地に回帰するのだ、って思想があるんだよね。
それは『ブラックパンサー』がワカンダという「故郷」であり「地上の楽園」を夢想することと重なるね」

ミノ 「そこで、「無理やり連れてこられたこの場所は我々のいるべき場所じゃない」し、かといって「故郷と呼べるほどアフリカの記憶もない」というところからむしろ、「我々の故郷は宇宙なんだ」とやったのが”アフロフューチャリズム”になるんだけど。だから『ブラックパンサー』は結構典型的にアフロフューチャリズムってると言えるな」

ぢゅん「アフロフューチャリズムっていうと、有名なのがミュージシャンのサン・ラだけど、音楽性うんぬんより「俺は土星から来ました」っていうコンセプトの方がアフロフューチャリズムってるってことなんだな。
今まで「あ、土星ですか、はい…」的な受け止め方してたけど、そんな切実な思いがあったんだなあ…」

櫻丼「単にアフリカっぽいSF、とかってことじゃなくて、他国に奪われた自分たちのルーツを見つめなおして創造するってのが、アフロフューチャリズムの根幹にあるって話だね」

ミノ「興味深いのが、アフロフューチャリズムでは「過去を書き換えることで新たな未来の可能性を創造する」ことと、「未来を書き換えることで新たな過去の可能性を創造する」ことが重なり合って起こってるという。過去と未来が一方向の直線上にあるというより、反復するように巡るイメージを持ってる」

櫻丼「そう言われるとタイムパラドックスめいて聞こえるけどね。確かに「事物の周期性」はアフリカのトラディショナルな宗教観の中に根付いてて…まあアフリカは広大だからその宗教についても十把一絡げにはできないけど、潮の満ち引き、月の満ち欠け、先祖から次の世代にわたる生と死のサイクル、その全ての円の運動の中に自分たちがある、っていうイメージは共通してよく出てくるんだよね」

ミノ「あり得たかもしれない未来を探ることが、同時に自分たちのルーツを探ることになる。この映画のワカンダもそういう役割を果たしていると思った」

相場「ナーーーーーーーーーツィゴンニャーーーーーーーーーーーーー」

ぢゅん「え?」

相場「いやまじサークルオブライフってことじゃん、と思って」

ぢゅん「ああ、そういえばライオンキングはまじで入ってたよね。だってご丁寧に”兄弟”に崖から突き落とされるシーンまであったし」

櫻丼「世襲制の話でもあったしな」

ミノ「俺、そこはどうかと思っちゃったけどな」

櫻丼「というと?」

ミノ「ワカンダはあんなに進んだ国なのに、トップの決め方は未だ家父長制っていうか、しかも最終的に決闘みたいなことしてさ。なんか野蛮じゃね?って思っちゃって」

櫻丼「でも、「野蛮」って評価することが既にこっちの文化価値観の押し付けだったりしない?あの世界の彼らにとってはあの方法が一番洗練されたやり方なんじゃないの」

ミノ「いや、それは言えるかも。でもなんだか伝統のエキゾチックさを美化して消費しているんじゃないか?って気分になったんだよな」

ぢゅん「それはどの立場から描いているかによっても変わってこない?『ブラックパンサー』はアフリカ系をレペゼンする立場の人たちによって作られてる作品じゃん。だから自信満々に真正面からアフリカisクールをやったんじゃないかと」

ミノ「まあね、しかし俺が捻くれてるせいなのか、完璧な地上の楽園みたいな観念を観るとちょっと不安になるんだよな。『アバター』とかもさ、ああいう未開の土地を全部リゾート地みたいに描くのはどうなの?ってね」

相場「わかんないけど、ミノの性格が捻くれてるっていう部分だけは100%肯定できると思う」

ミノ「ありがとう」

ぢゅん「プロダクションデザイナーのハンナ・ビークラーと衣装デザイナーのルース・E・カーターは、ハリウッドで成功する黒人女性のロールモデルを作ったって意味でも注目されているんだよね。シュリの服が毎回遊び心があってよかったな〜」

相場「デザインといえば陛下専用機がルンバっぽくてよかったね。しかもパチモンのほうのルンバね。より虫っぽいほうのルンバ」

櫻丼「褒めてんのかそれは?上から見ると「仮面」の形をしているらしいよあれは。スーパーヒーローのマスクのルーツもここにありという含みもありそうだよね」

ミノ「街並みもごちゃっとしたエナジーがあるところはよかったんだけど、建築はもうちょっとヘンテコにしてもよかったのかなと思う。というのも、ワカンダは何もないところから急にヴィラニウムっていう超凄い素材を手にしちゃった国なわけでしょ?
それってつまり鉄筋高層ビルの建て方を覚える前に物の浮かせ方を覚えたようなものじゃないかと推測するわけ。だとしたら他の先進国とは発展の仕方がまるで違うだろうし、ひょっとしたら力学の基礎も違ってくる。
だからもっと分かりやすく、通常の都市では考えられないような、とんでもない建物の立ち方とかしてても面白かったんじゃないかと」

櫻丼「いわゆるリープフロッグ現象ってやつかな」

相場「蛙?」

櫻丼「現実のアフリカも今、段階的なインフラの整備とかをすっとばしていきなりドローン配達が始まったりしてて、そういう間の進化をすっとばしていきなり最先端の技術を手に入れることをリープフロッグっていったりするんだけど…ナイロビなんかは実際、それですごいIT系のクリエイティブムーブメントが起きてたりして、他国の企業からも熱い視線送られてたりするっていう。だからワカンダのSFみも全然嘘っぽくないっていうか」

ミノ「しかしナイロビと違ってワカンダの最新テクノロジーって、インターネットという観念を通過してないSFって感じがある」

相場「でも、ふつうに携帯みたいなので通信してたよ」

ミノ「確かに無線通信自体はあるんだけど、あくまでピアトゥーピア、一対一の通信ぽさがある。それにインターネットの観念っていうのはもはやただの通信ってことじゃないだろ」

ぢゅん「ああ、それスターウォーズもそうなんだよね。ホログラムとかで長距離通信している場面は描かれるんだけど、どうも高官とか一部の人間にのみ許された技術っぽい」

ミノ「つまりSW世界はデジタルディバイドが起きてる世界なんだけど、そこで『ローグワン』が起こるんだよね。
それはなにかっていうと、あれはデススターの設計書のデータを主人公のジンたちが命がけで母船に送るってのが筋だよね。
でもそれってインターネットが普及してればそのままスマホからクラウドにコピーしちゃえば終わりな話だろ?
でもデジタルディバイドが起きてる社会では「情報をシェアする」ってことが命の危機を伴う、政治的な行動になる…つまり『ローグワン』はインターネットの公平性についての映画なんじゃないか…って読み解きがThe Vergeに載ってて面白かったぜってことを俺は言いたかっただけなんだけど話がそれすぎましたな」

櫻丼「うん…。あ、でもワカンダ民がみんな熱心にSNSとかやってる感ないのって、現実でNSAが第三世界の情報収集に弱いのは単に皆が逐一自分のメタデータをFacebookに残さないから…ってことと重なって、ワカンダが世界から「隠れてる」っていう設定に対して説得力があると思ったよ」

ぢゅん「そういえば、最近の映画の悪役といえばNSAが良く出てくるけど、今回はCIAだったね。まあ悪役でもなかったけど」

相場「SHERLOCKのワトソン君の人ね。ていうかあの人、前回出てきたときはもうちょっと嫌な奴っぽいイメージだったんだけど気のせい?なんかめちゃいい人じゃん今回」

ミノ「ちゃんとアクション面でも活躍シーンがあるサービスっぷりだったな。しかし、米軍の配下で大量に人を殺したキルモンガーがヴィラン役になっている反面、CIA職員が良き隣人キャラっていうのは、微妙に難しいバランス感覚だなと思ってしまったけど」

ぢゅん「いやでもさ、彼はCIA職員である前にマーティンフリーマンであるわけじゃん」

ミノ「……………そうだな!!」

櫻丼「納得するの早いな…」

ぢゅん「マーティンフリーマンは俳優界のワイルドカードだから。なんでも仮託できる余白として存在してるわけ。ちなみに同じ種類にドーナルグリーソンがいます」

櫻丼「今回は彼とアンディサーキスしかメインの白人俳優がいなかった、ってところもブラパンのゲームチェンジャーなところだよね」

相場「アンディサーキスは今回は珍しくアンディサーキスのモーションキャプチャを演じていたね」

櫻丼「ややこしく言うなよ。ところで俺はメインキャラのなかではオコエがダントツで好きだった。逞しいだけじゃなくて、信念が強くて、ルックスには洗練された雰囲気があって。似合う自信があったら俺もあの髪型にしたいよ」

ミノ「リーダー似合いそうじゃない?ねえやってみてよリーダー………じゃない!!!!」

地念「はい」

ぢゅん「またお前かよ」

地念「みなさんが地念に気付くまで、2時間かかりました。あの、前回から思ってるんですけどリーダーがいないことに気付くの遅すぎじゃないですか?リーダーなんですよね?」

櫻丼「いや、リーダーってこう忍者的なところがあるからさ…っていうか今回はなんでリーダー来れないの」

地念「リーダーは最近Netflixに加入したんです」

ミノ「おお、あんなに「俺は劇場派だ」って言ってた人が」

地念「Netflixは、ひと作品見終わるとすぐに次のおすすめ作品が自動で再生されるんです」

ぢゅん「うん」

地念「で、その作品を見終わるとまた次のおすすめ作品が自動で再生されるんです」

ぢゅん「うん」

地念「で、その作品を見終わるとまた次のおすすめ作品が自動で再生されるんです」

ぢゅん「うん」

相場「怖い怖いループループ」

地念「というわけで今リーダーはNetflix無限地獄に絡め取られて自宅から出られない状態です」

ミノ「リーダー、史上初めてNetflix死する人間となってしまうのでは…」

櫻丼「わくわくするんじゃない」