嵐とみる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

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マーベル映画は一見さんお断りか否か。そしてAwesome Mixが導く銀河の真実に触れてしまったリーダーだったが…。

ミノ「はい、反省会しますよ。続編に一番はしゃいでた相場くん、ヨンドゥを見るなり「えっ…ムジン君…?」って訊いてきましたよね。先生、正直驚きました」

相場「いや、めっちゃ楽しみにしてたのは本当だよ。でも前作から間が空きすぎだからさ、キャラクターとか細かいことは忘れちゃったよね」

ミノ「なんで?なんで予習してこないの?最近のアメコミ映画は予習しない子に容赦ないって知ってるでしょ?」

相場「シビルウォーとかよりは分かりやすい話だから大丈夫かと思って…。でも今回、一作目より元ネタが分からないギャグが多かった気がするんだよね。『フットルース』のケヴィン・ベーコンは知ってたけど、なんとかハッセルホフって言われてもピンとこなかった」

櫻丼「確かに日本でのお馴染み感はケヴィン・ベーコンのほうがあるのかな…。『ナイトライダー』は日本でも放送されてたけどね。俺は、最後にヨンドゥの形見として登場するZUNEが実在の製品ってのは知らなかったな。これは日本では未発売なんでしょ」

相場「ほら、そういうのって、アメリカの内輪ウケじゃん!全世界をターゲットにして作ってるんじゃないの?」

ミノ「というか、ターゲットは全世界の中の”マーヴェル映画を見る層”だろ?そういうアメリカのカルチャーはマーヴェル映画を観る層には基礎教養だってことなんだよ」

相場「うーん、でもそういう、オタクが「おお、これ知ってますぞ、ニヤリ」みたいな笑いって、なんかそれ以上に生産性あるの?その手の笑いって、サスティナビリティがなくない?もっとうんことかで笑いをとるほうがグローバルだと思うんだよね」

ミノ「もっともらしく言うんじゃないよ」

ぢゅん「話戻るけど、ZUNEはAppleのiPodに押されて消えてしまったっていうマイクロソフトの黒歴史MP3プレイヤーみたいなんだよ。だから「近頃の地球人はみんなこれ聴いてるらしいよ」って台詞がギャグになってるわけだけど。それから前にも言った自説だけど、多分重要なのが、ウォークマンと同じく、それが絶滅したフォーマットだってことなんだ。取り替えが効かないってことがAwesome Mix自体に身体のメタファーを与えている」

櫻丼「俺が感動したのは、クライマックスでウォークマンが壊されちゃった後、ヨンドゥから「俺は矢を頭で動かさない、心を使う」って言われるだろ。その時初めてクイルの”心の中”で音楽が流れるんだよね。それまではずっと、冒頭でグルートがアンプのケーブルを繋ぐってところもそうだけど、Awesome Mixは”再生されている”って描写がわかりやすく出てきてたんだ。だけどあのシーンで初めて空で流れた」

ミノ「Awesome Mixが身体の枠組みを超えたんだね。クイルがやっと母の死を乗り越えたっていう象徴的なシーンにも感じる。モノは壊れる。でも母はずっと心の中にいる、だからウォークマンがなくても再生できるんだ…って、受け入れることが出来た感じ」

櫻丼「だからもうAwesome mixはいらない…とはならないところが、まあ、シリーズもののサガっていうか」

ぢゅん「しかしMP3って、単純にその一回性とか唯一無二感でいうとカセットで聴く音楽より希少感は薄れちゃうよね。カセットってやっぱり人間がこう、リアルタイムで録音ボタンをガシャッと押してさ、その曲間の間合いひとつに人間の手垢というか、いわば怨念みたいなものがこもるような感じがあるわけで、それに比べると味気ないよな、ちょっと」

相場「うんうん、ソノシート300枚の方がよかったよね」

櫻丼「ポータブル性ゼロだな…」

ぢゅん「ヨンドゥとの疑似家族エピソードには普通に泣かされちゃったけどね。ロケットとの結託の場面も熱かった。少年マンガみたいにストレートなんだけどさ。どことなく懐かしい感じがするくらい」

ミノ「懐かしさ、っていうのは一個のテーマなんだろうね。俺はクイルとガモーラの絶対に進展しない恋愛には高橋留美子を感じた」

櫻丼「どこかでこんなドラマを見たことがあったような…って気持ちにさせるよな。人の郷愁をくすぐる」

ミノ「ある時代にあったとされている”おおらかさ”のイメージを追いかけている感じがするね」

相場「めっぽう女に甘い主人公、なんてのも最近見ないもんねえ」

櫻丼「最近ちょうどそんな月9があったような気もするが…」

ミノ「元々、ファミリー映画の皮を被ったボンクラ向けSFファンタジー要素みたいなところはあるよね。男の子っていつまでたってもうんことかちんちんとかママとかゲームとか、しょうもないなあ、でもいざとなれば銀河だって救っちゃうんだぜ、みたいな。2のほうがそのノリが加速していた感はある」

相場「クイルは映画版クレヨンしんちゃんと同じコアを持っているのかも…」

ミノ「皮肉ぶってるけど、実はそれって照れ隠しなんだ…っていうのは、ロケットの性格であり、この映画自体の性格でもあるよな」

ぢゅん「にしても、レーティングを考えると下ネタは気持ちよく笑えなかったりする。子供も観てるだろ?って」

ミノ「どうやって両親が妊娠したか…のくだりは、下ネタというより異文化ギャップギャグなんだと思ったけどね。地球人にとっては下ネタだけど、ドラックスの星では下ネタって感性がない」

ぢゅん「わかるけど、結局下ネタだろ?」

ミノ「まあね…。マンティスを醜いって言い続けるのも、『宇宙人ポール』で宇宙人が「地球人を初めて見た時、頭が小さすぎてキモくて吐いたぜ」っていうのと同じ異文化ギャップギャグだろうし」

ぢゅん「わかるけど、結局容姿disだろ?」

ミノ「まあね…。あれはマンティスが地球の観客から見て全然醜くないってところに担保がとれちゃってるからこそやれるネタ、って部分に危うさはあるけどね。ともかくドラックスの星では外見の醜いものを醜いって言うのは別に悪いことじゃないんだな。それはマンティスがロケットを「かわいい」って言い続けることと対になってるんじゃないかな」

相場「マンティスは良かったよね。ガモーラはツッコミだし、今まで女の子キャラのボケがいなかったじゃん?マンティスというボケが登場することでダイバーシティのレベルが上がった」

ミノ「もっともらしく言うんじゃないよ」

ぢゅん「ネビュラは?ネビュラはボケじゃないの?ずっとボケだと思ってた…」

相場「でもやっぱりあそこの姉妹はシリアスだもん。あの2人のケンカのシーンはすごかったね」

ぢゅん「キャットファイトという言葉を死語にする戦いっぷりだったよ!」

相場「あそこが肉弾戦だったから、クイルとお父さんの戦いはもっととんち勝負になるんだと思ってた」

櫻丼「相場くん”とんち”って言葉好きだよね。俺も、クイルが手にしたあの神のパワー?でもっと何か壮大なことやるんだと思ってたら、結局パックマン出すことで終わったのには笑ったわ。最後は爆破という物理攻撃だったね」

ぢゅん「クイルの実父がセレスティアルっていう呼び名よりも「神」って単語を執拗に使ってたのは、クイルへの甘言の意味合いがあったんだろうけど、観てる側もちょっと混乱しちゃったな。いわゆる唯一神的なものをイメージしちゃって。そうじゃなく、あくまで銀河の原初からいる生命体、って感じだったよね」

ミノ「あんな”人類補完計画”的なことをやろうとしてた割には、あの死に様を見ると、強力ではあったけど所詮は広い銀河の中の一個の生き物に過ぎなかったんだったんだなあ、って感じだよね」

ぢゅん「もっと凄いやつかと思ったらわりとただの悪役でショックだよ…」

櫻丼「でも、悪って言い切れるのかな?彼は彼で、人間の価値観では計れないような、はるか”上”にある善のために何かやろうとしていたのかも」

ぢゅん「そうだとしたら、もっと超然とした描写が欲しかったなあ。映画的には単なる悪役として扱っていたように見えた。というか、単にヨンドゥをageるための装置として使われた感も…」

櫻丼「まあ、ヨンドゥがクイルを攫ったことに説得力が必要だからね…」

ぢゅん「でもやっぱり俺はこのシリーズの”圧倒的無意味モーメント”が好きなんだよな。「誰かテープ持ってる?」のシーンとか」

相場「グルートが中々目的の物を持ってこないシーンとかね。そういえば、グルートは完全に赤ちゃんみたいになっちゃってたね。かわいかった。グッズが売れそう」

櫻丼「俺的には、前作のグルートとロケットの『二十日鼠と人間』みたいな哀愁が好きだったから、グルートがただのkawaiiキャラにされたのはちょっと気にくわないんだけど」

相場「えっ…、櫻丼くん、あんなかわいい生き物に難癖つけようとしてるの?」

ぢゅん「まじか…」

ミノ「流石の俺でもちょっとそれは…」

櫻丼「わかったわかった俺が悪かったから戻ってきてみんな」

相場「グッズが売れるのは映画館の存続のために良いことなんだよ!俺、ピンバッチ買ったもん」

櫻丼「わ、わかったよ。俺もベイビーグルートのフィギュア買うから…」

リーダー「アイアムリーダー」

櫻丼「お…」

ぢゅん「リーダー今日初めてしゃべった?」

ミノ「リーダーは映画終わった後からずっと「アイ アム リーダー」の三語だけで通してるんだよ」

ぢゅん「無理があるよー…」

櫻丼「いや、前向きに考えれば、バイナリ信号より情報量は多いはずだぞ」

リーダー「アイアムリーダー」

櫻丼「だめだわからん」

相場「なんかリーダーはAwesome Mixを通じて銀河の全ての答えに到達したらしいです」

櫻丼「なんでそこ通じてるんだ」

リーダー「アイアムリーダー」

ミノ「答えってなんだ…42とか言うわけ?」

相場「いや…これは…」

リーダー「アイアムリーダー」

ぢゅん「なんて言ってるの?」

相場「そんな…そんなことって…」

リーダー「アイアムリーダー」

櫻丼「何が起こってるんだ相場くん?!教えてくれよ!!」

相場「俺の口からはとても…この世には知らないほうが良いことだってあるんだよ…」

リーダー「アイアムリーダー」

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