本音を言わせてしまう金色のアレを手に入れたミノ
ミノ「さて、ワンダーウーマンは日本公開前から「DC史上いちの傑作!」と謳われていたわけだけど、みんなはどうだった?」
櫻丼「ワンダーウーマンがかっこよくて最高でした!」
ぢゅん「ワンダーウーマンがかっこよくて最高でした!」
相場 「ワンダーウーマンがかっこよくて最高でした!」
ミノ「……」
櫻丼「な、なんだよ…」
ミノ「…今日はみなさんにちゃんと本音で語って頂くためにわたくし、こんな金色の細長いブツを用意してまいりました」
櫻丼「まさかアマゾネスの相手を自白させる鞭を…?」
ミノ「いえ、これはサ○エントロジー高田馬場支局からお借りしたE-メーターの先っぽの部分です」
ぢゅん「どうみてもただの針金だね…」
ミノ「まあ、とにかくもうちょっと突っ込んだ話をしようよ。この針金に触ったら本音が出てしまうというていでひとつ。えいっ」
櫻丼「あーーーっと、いや映画自体よりも映画を取り巻くマーベル派DC派抗争とか主演俳優の政治的背景がアレとかいろいろ事態が複雑すぎてちょっと発言が慎重にならざる得ないっていうか〜」
ぢゅん「キャメロンとジェンキンスのフェミニズム論争の件とかもね〜〜発言が慎重にならざる得ないっていうか〜〜」
相場「ワンダーウーマンがかっこよくて最高でした!」
ミノ「相場くんは最初から正直だったかよ」
相場「えーだってかっこよかったでしょ普通に。蹴りがいいよね。俊敏なだけでなくちゃんと体重が乗ってる感じのある蹴りだったよね。でももうちょっと明るいアクションとロマンスとコメディっていう感じだと思っていたから、意外に深刻なテンションで驚いた。俺はもっとスパイダーマンホームカミングみたいな明るいのを期待してたから」
ミノ「あ、今の絶対だめよ。DC作品の感想にマーベル作品を引き合いに出すのは絶対やっちゃいけないからね。敏感なところに触れるゾーンだからね」
相場「なんなのさっきからみんな!自由に発言させてくれよ!ていうか、一旦そういう周りのごたごたみたいのはさ、置いておいてさ、純粋に映画を観た感想をぶっちゃけたらいいじゃない。言いたいことも言えちゃうこんなトランプ政権一と書いて世の中と読む一じゃ、ポイズン。なんだし」
櫻丼「でも俺は映画だけを全てから切り離して観ることが”純粋に”映画を観ること、っていう風には思えないのさ。時代の空気、製作された背景、観客からのフィードバック、評論家のレヴュー、とか、そういうの込み込みでいっこの「映画体験」だ、っていうのは、いつの時代もそうだったんじゃん?って思うわけ。最近はSNSのおかげでノイズが増えたって感じがちだけどさ」
ミノ「そりゃごもっともかもだが、そこに組み込まれて「めんどうだからなんも言えない」ってなるのは、それはもう純粋じゃないでしょ、ってとこじゃない?
そういう意味では、キャメロンがどんな立場であれ正面から「意見した」ってのは健全だったね。意見の内容が正しいかうんぬんはともかくとして」
櫻丼「いや、あまいなミノ。インターネットの歴史上で唯一賢い発言は、沈黙なんだよ…」
ぢゅん「過去になんかあったんすか?」
相場「あのさ一応確認だけど、ここ居酒屋だよね?でこれは内輪の酒の席トークだよね?FF外から失礼とかされないじゃん?何を恐れてるの?!」
櫻丼「別に誰かから意見されるのが怖いってだけで発言が慎重になってるわけじゃないんだよ。これは映画の感想における俺のアティテュードの問題で…」
相場「そっか、じゃあなんかめんどうだからいいや」
櫻丼「……」
相場「ところで、キャメロンさんはワンダーウーマンの何を批判してたの?」
ぢゅん「ワンダーウーマンの描写が現代のフェミニズムアイコンとして妥当かどうかって点かな」
相場「それは、キャメロンさんが決めることじゃなくて、実際の女の子たちが元気や勇気をもらったりする結果が決めることじゃないの」
ぢゅん「そういう子達はいっぱいいるだろうね。それはいいことだと思う。ただキャメロンは自分も映画産業に関わる者としてジェンキンスと同じ責任を担っていると思うからこそ懸念を表したんじゃない?
それにワンダーウーマンはオリジナル作品の誕生自体がフェミニズムと深く関わっているから、そこらへんに期待するのはまあ自然の流れだよね」
ミノ「ディズニーのヒロインが王子様を捨ててから3年たった今、恋は勇気を奪わないし、愛嬌は尊厳を奪わないし、ロングヘアでマスカラばっちりしてても蹴りはキマるし、キュートとパワーは両立するよ、って打ち出し方するのは良かったんじゃない。まあ逆にちょっと時代を先回りしすぎたのかもしれないけどね」
櫻丼「そう、やりたいことはよくわかるし、良いと思うんだけど、多分あのダイアナのキュートさが、プリキュアとかみたいに、女子キャラクターだけの空間で発揮されてたらもっとクリアだったよね。しかしどうしても脚本の都合上中盤からダイアナが紅一点的な存在になってしまうわけで、そこが誤解を生じさせる微妙なラインになってるとおもうんだな。
某女性アイドルグループの人が試写会イベントで「強い女は嫌味に感じる男の人もいるかもしれないけど、この映画はそういうんじゃないので〜」的な発言をしたのがちょっと燃えたってのがあったじゃない。
それってダイアナのキュートさが「周りの男性に脅威じゃないですよ〜」のエクスキューズに見えてしまったパターンだよな、と」
ミノ「おベンキョーはできるけど、ちょっと天然、みたいな感じ強調されてたしね。異文化ギャップギャグに落とし込んでるのはわかるし、うまいところもあるけど、あれだけ色んなジャンルの文献を読み倒してる設定にしては、文献から得る知性とか知見を軽視してない?と思うところもあったな。
「お嬢さん、本で読むだけじゃ分からない現実があるんだよ」っていうのはよくある話だけど、それで分からない現実ってのはたいていは単に読む量が足りないんだよ」
ぢゅん「ダイアナの「世間知らず」キャラは、オチの「実はアレスは本当に存在していてダイアナの言い分が正しかった」に意外性を持たせるためのカウンターになってるんじゃないの。神話の物理世界と、人間の物理世界が、矛盾なくパラレルに存在していた、ってことなんだね」
櫻丼「俺が今回の映画で面白いと思ったのはその世界観なんだけど、割と他のヒーロー映画が、例えばスパイダーマンホームカミングもそうだけど…完全に人間社会の中で共に生きてる設定になっている中で、ワンダーウーマンっていうのは最後までどこかシンボル的なんだよね。「戦場に戦いの女神が現れて、敵を打ち負かした」と書いた時に、これを叙述的にとらえて読めば、実際に戦場にワンダーウーマンというすごいやつが現れて戦った、ってことだけど、大抵の場合、もっと比喩的に読むよね。だから、あの村の人たちは「あの時、美しい女の形をした戦士が突如現れて、村を救ってくれた」と語り継ぐことだろうけど、それは世代を渡るうちにどんどん象徴的な意味合いが増してくるはず。それってまさに「神話」なわけだけど、現代の俺たちがアメコミヒーローものを楽しむ気持ちともダブってくるんだよね」
ミノ「バットマンとかアイアンマンとかはさ、人間じゃん。でもワンダーウーマンは最初っから神的な存在なんだよな。ダイアナにとっての人間は仲間とかじゃなくて「救うべきか、否か」って存在だった。
俺はこの辺でちょっと『ドッグヴィル』を思い出したんだよ。あれは、実は特権的な存在である女主人公が、キリストよろしく市井の人間の中に身を落として、彼らの愚かさを自分の身をもって贖罪しようとするんだった。
なんだけど、最終的に彼らが自分の美学に見合わないと悟ると、村人たちを皆殺しにする。
ここで決断の前にドッグヴィルの主人公が車の中で父親に諭されることと、ダイアナが「人類なんて消えてしまった方がいい」とアレスに囁かれることは似ている。
どちらも「彼らを救うか、滅ぼすか」の二者択一で、それを自分の美学の天秤にかける、ということも似ている」
相場「救わなくていいからできればほうっておいてほしいよね…」
ぢゅん「だけどそこでワンダーウーマンがこの傲慢さについてのドッグヴィル問題を回避してるのは、そこにスティーブっていう存在がいたからだとおもう。この映画において、ロマンスの描写があることはすごく大事なんだとおもうんだよ。
最後のダイアナの選択が、ロマンスでなくあくまで俯瞰的な、人類への博愛主義に基づくものだとしたら、彼女はたまたま違う選択をしたというだけで、本質的にはドッグヴィルの主人公と同質かもしれない。今回は救うに足ると判断したから救った、というだけで。でも俺は、ダイアナの場合はそうじゃないっていう風に捉えた。総合的に判断したら、まあ、人類は滅んだ方が善だ、とダイアナの立場なら思うだろうよ。
でもそうしなかったのは、全然世界とか善とかは関係ない、ただあの時スティーブの握った手が暖かかったなあ、とか、抱き合ってほっとしたなあ、とか、そういう些細なことへのどうしようもない愛着というのが、最終的に彼女を動かしたんじゃないかって。
その人間的な、神というにはあまりに人間的な何か、あまりにパーソナルな、恋という引力、その謎によって、彼女は世界を救ったんだ、だってこれはラブストーリーだから。っていうことなんじゃないかって俺は勝手に思いたいんだけど。だってその方がロマンチックだし」
ミノ「うん。素敵やん」
櫻丼「ところで、せっかくだからリーダーも起きて一言ぐらい感想聞かせてよ」
リーダー「え…俺か…いや俺の感想はたぶん言わない方がいいとおもうんだけど…」
ミノ「は?もうその面倒臭いくだりは終わったから!リーダーもこの自白強制針金いるなら付けるよ?えいっ」
リーダー「いや…おれが凄く疑問に思っているのは…ワンダーウーマンは神だし無敵で…傷とかもすぐ治っていたように見えたわけで…そしてスティーブはごく普通の人間なんだよな…で…そうするとあの晩…スティーブのおちんちんはワンダーウーマンの処女膜に勝てたんだろうかっていうのが…」
ミノ「もっかい寝てくんないかな?」