嵐とみる『』特別編:2017年あれやこれやねぎらい会
櫻丼「年の瀬だねえ」
ぢゅん「1年早いね。今年もみんなとは色々映画観に行けてよかったよ」
ミノ「一応、今年観に行った映画タイトルを振り返っておきますか。ええと、『ドクターストレンジ』、『ララランド』、『アサシンクリード』、『ゴーストインザシェル』、『美女と野獣』、『ガーディアンズオブギャラクシー:リミックス』、『スプリット』、『メッセージ』、『ローガン』、『ジョンウィック:チャプター2』、『ワンダーウーマン』、『ブレードランナー2049』、『スターウォーズ/最後のジェダイ』」
相場「こうしてみると、シリーズものとか、リメイクが多い気がする」
ミノ「俺たちが大作系を好んで観てるのもあるけど、最近、劇場公開する映画って既にファンがついてて収益の見込みがあるシリーズものに比重が傾いてて、それ以外はVODへ…って二極化が進んでない?」
櫻丼「ミニシアターって受け皿も物理的に減ってるしな」
相場「VODって……ヴォイド・オブ・ドラゴン…?」
ミノ「誰だよその北欧ブラックメタルバンドは。ビデオオンデマンドな。最近だとNetflixとかHuluとかさ」
ぢゅん「まあでも単純に大作は劇場へ、低予算系はVODへ、ってことでもないんだよな。今年だと全編スマホ撮影した『タンジェリン』なんかは劇場公開したし、TSUTAYAでも扱ってる。一方、VODオリジナルドラマ畑には有名監督がどんどん参入していってる。要は選択の問題ってか、企画によってどう展開させるかの選択肢が増えたってことだよね。ビジネスモデルの幅が広がった」
櫻丼「これって音楽界は既に何度か経験している転換期じゃない。iTunesの登場とか、Napsterの失敗を経たその後のSpotifyの台頭とかで」
ぢゅん「そうだね。音楽業界は既に配信モデルの良い面と悪い面を見てきてる。むしろそこで免疫がついていたから世間的には映画界のVOD展開にそこまでアレルギー反応が起こらなかったのかもね」
相場「良い面っていうとやっぱりワンクリックで見られて便利ってことかね」
ミノ「むしろそこが一番悪しき点だと俺は思う。そうやってワンクリックでいつでも観られるからいいや、って軽率にお気に入りに放り込んだリストがどんどん溜まりすぎて逆に観る気なくすんだよ!!」
相場「それはミノの問題でしょ、便利は便利でしょうが」
ぢゅん「いや、気軽に観られるって事こそ問題、っていうのは、一理あると思うんだ…。広告収入モデルが出てきた頃、youtubeとかVEVOで音楽を聴くのは実質タダになって、これには特にCD世代から抵抗や反発があったわけだけど、でもね、CD世代だって、実は音楽コンテンツそのものに金を払ってたわけではないんじゃないか?あれってのは、音楽にではなく、CDを買うって「労力」に対してお金を払っていたんだと思うんだよ」
櫻丼「労力の方に…?えっとつまり、外出して、CDショップに行って、お目当てを探して、レジに持っていく…っていう労力に対してお金を払ってたってこと?そして、youtubeで音楽を聴くのはワンクリックしか労力がかからないから、それにはワンクリック分の商品価値しかないと…?」
ミノ「人間は行列に並ぶために行列に並んでいる、みたいな話になってきたな」
ぢゅん「だから、変なことを言うようだけど、そこになにかしら妥当な「労力っていう付加価値」を付けることを考えないと、コンテンツ自体はどんどん買い叩かれちゃうんじゃないか、って危惧しているわけよ」
櫻丼「でもさ、ある程度はロジカルな労力じゃないとダメだよね。再生するためには100回クリックが必要、とかじゃただメンドクセえだけだもんね?」
ミノ「その話はビットコインを連想させるけど。あれもクッキークリッカーみたいに簡単に無限増殖できたら価値がないわけだよね。マイニングするのに計算コストがかかってるから価値が出てくるし、システムの信用によって価値が担保される」
櫻丼「ネットではその信用ってのも課題だろうね。例えば劇場公開映画はある程度上映本数も決まってるし、特に洋画なんかは日本で上映される時点で選りすぐられて来ているわけだよね。どこどこで賞をとったとか、だれだれが監督だとか、そういう信用によって観に行く。でもオンデマンドはこれから無限にコンテンツ数が増えるかもしれない。その内新作配信がとても把握しきれない量になりそう。そうなった時、何を信用して観る作品を選ぶのか?となってくる。言い換えると、誰がそれをキュレーションするのか?っていう」
ぢゅん「Spotifyにはプレイリストがあるし、Bandcampも今週の推しアーティストとかやってるから、やっぱプラットホーム自体がそこを担うんじゃないの。あとは友達のおすすめ、SNSで話題になるとか…」
櫻丼「そうなってくるとさ、あらゆるサイトのオススメ機能ってのはAIを使った最適化の流れなわけで、個人の嗜好に合わせたおすすめカスタマイズが進んでいくでしょ。だからどんどん観るものが個人的に偏っていくんじゃないかと」
ミノ「景色が偏っていくのはインターネットの性質そのものだよね。今や、同じワードを検索しても、Google検索の結果は人によって違うし、「多数派意見」もタイムラインによって違うし…」
櫻丼「今の映画クラスタみたいに、その人の好むと好まざるに関わらず、みんなが公開と同時に一斉に同じ作品を観て、一挙に感想がネットに溢れる、みたいな機会は、もしかしたら減るかもしれないよね」
相場「そうなったらちょっとさみしいかも。俺、映画って、イベント性とか、お祭り感と社交の成分も合わせて好きだし」
ミノ「でも俺は正直映画館で、前の人の頭がスクリーンにかぶったり、隣の人の食事の匂いが気になったり、スマホの光がうざかったりするので気が削がれるよりは、家でネトフリゆっくり観る方がいいかも、っておもっちゃうよ」
ぢゅん「その辺、VRには期待してるんだよね」
櫻丼「VR映画ってこと?」
ぢゅん「いや、どっちかっていうとVRで「観る側」の環境を操作できるんじゃないか、っていうのに興味がある。例えば、VR空間内での映画上映権利的なものが安くなったら、みんながその中で個人映画館を持って、独自の上映企画を作ったりしてもいいわけ。で、「今週の金曜19:00から自分の劇場で『ダイハード』上映会開催するよ」、とかSNSで宣伝したら、観たい人はみんなバーチャルチケットを買って、指定の時間に指定のVR内の場所にアバターを行かせて、観ると。応援上映にしたいんだったらマイク音声をONにして他の観客の声を聞けるとか、チャットしながら観てOKとかって企画もありだね。いつでも好きに観れますよ、ではなく逆に制限を設けることでライブ感を出せるんじゃないかなと」
相場「いいね、じゃあ俺は深夜の「3部作の中間映画特集」しようかな。『マトリックスリローデッド』『ゴッドファーザー2』『ロードオブザリング二つの塔』の三本立てです!」
ミノ「なんで途中だけ見せられるんだよ。めっちゃ中途半端な気持ちになるだろ」
ぢゅん「隣の席にオスカーアイザックが座っててくれるVR環境でのホラー映画上映とかもありだよ」
櫻丼「畳空間に正座で観る小津安二郎とかね…」
ミノ「いやーでもそんなVRインフラが整うのはまだまだ先じゃない?今もNetflixだってインフラなくて入れない人いるから。特に若い人はPC持ってない人多いし、スマホも大手キャリアのプランは通信制限ありきだろ。ヨーロッパみたいに、ネット使い放題もしくは各サービスと提携して、VODアプリ通信費は制限対象外にする、とかその辺が追いつかないと話にならないよ」
櫻丼「まあ、未来に期待して良い面を見ておこうよ。音楽業界に配信システムが訪れて良かったところは?」
ぢゅん「やっぱり若くてお金持ってない制作者が出て来やすくなったとか、中間手数料がほとんどなくなってアーティストの取り分が増えたとか、レーベルの言いなりにならなくていいとか…?でも、例え公開するのがタダでも聴かれないことにはねえ…」
ミノ「結局キュレーション問題に戻ってくると。俺ね、そこをどうにかするのってZINE文化なんじゃいか?!って気がしてるの」
ぢゅん「つまり同人誌?」
ミノ「そう。最近『パーティで女の子に話しかけるには』を観てさ、70年代のロンドンの少年たちが、自分たちのお気に入りのパンクバンドをレヴューする同人誌を発行してるんだけど、それがめっちゃ楽しそうなんだよな!俺あの感じをね、現代に復活させたい!」
相場「どうぞ」
ぢゅん「どうぞ」
ミノ「いやめっちゃ冷たいじゃんなんなの」
櫻丼「でもいいと思うよ。膨大なネットの海に埋もれそうな作品を掬い上げる方法がすごいアナログっていうの。手作りの熱量ってところで信用も生まれるし」
ぢゅん「あ、あとね、配信は結構音楽を聴くって体験それ自体を変えたと思うんだよね。まあそれは新しいデバイスが登場するたびに起こっている事だとは思うんだけど。最近特に『ベイビードライバー』を観た時に感じたんだ」
ミノ「エドガーライトの映画ね。主人公が常にiPodで音楽聴いてて、で映画自体が、執拗にその主人公が聴いてる音楽に合わせてアクションが展開するんだよね。ギターのフレーズのキメと車のアクセル踏むタイミングをばっちり合わせたり…」
ぢゅん「あれは「僕のプレイリストに世界を同期させる」って映画でしょ。それで、好きな曲を何回も「聴き込む」、っていうのが織り込み済みの音楽の描き方をしている。もはやそこにノスタルジーを感じちゃったんだよな。要するにiTunesっていうのは買い切り型だから…」
櫻丼「ああ、そこがSpotifyやTidalのストリーミングに移行すると、プレイリストやオススメを適当に流して、常に知らない音楽が流れていくような環境になった。それで例え同じ曲が流れて来ても、それは毎回違う文脈で流れていくわけで…あ、つまりいま音楽文化は一周回って、録音機器登場以前の「一回性」を擬似的に再び手にしたのかも…」
ぢゅん「言えるよね。だからいま音楽は「わたしのプレイリスト」から「誰かプレイリスト」になったんだよ。そういう意味でベイビードライバーはまさしくiPod-eraの映画なの」
ミノ「確かに音楽の聴き方も変わりはしたけど、映画はもっとドラスティックに変化する気がするな。観客参加型的な企画もさらに熱くなりそうだし」
相場「マルチエンディングとかね。そういえばプリキュアの映画とかって、なんか魔法のステッキ?みたいのを子供にふらせたりする演出あるじゃん。あれで応援が足りないと本編の演出も変わったりしたら面白いよな」
ミノ「ああ、それで確変リーチが起きると天井のライトも点滅したりな」
相場「CRプリキュア的な発想やめて」
ぢゅん「インタラクティブ系の作品って、音楽の方でも何度か試みられてるけどさ、まだ受け手が扱いきれてない印象があるんだよね。例えばビョークとかレディオヘッドとかも楽曲をアプリでリリースしてて、各端末側の操作や環境によって曲を再構築できたりするんだけど…でもさ、そういうのって目指してる方向とかモチベーションは理解できるんだけど、正直、でどうしろと…?感が否めなかったりするんだよなあ」
ミノ「映画でそれをやると「それはもはやゲームでは…?」ってことになりそうだしね。って話は『アサシンクリード』の時にもしたよな」
相場「むずかしいねえ。まあ、その辺は頭の良い人が考えるでしょ」
ミノ「俺たちがクダを巻く楽しみを全否定してくるね!」
櫻丼「あと今年の大きな動きといえば#Metooでしょ。この運動の中で草の根的にみんなの意識が変わっていくのが一番良いけど、まずもって権力が一箇所に集中しすぎる構造自体が怖いんだよな。そういう意味でも、VODなり、クラウドファンディングなり、映画製作の方法の選択肢が増えることは良いことだと思うんだよね。あの人に逆らったら映画界でやっていけない、みたいな縦社会を崩して、横に広い世界になるといいよね」
リーダー「YO、MC櫻丼、言いたいことはそれで全部か、YO?」
櫻丼「なに急に」
ぢゅん「リーダーはな、最近フリースタイルダンジョンにはまってるんだ」
櫻丼「今になって?しかしそのわりには昭和なスタイルだな」
リーダー「YO、俺とMCバトルだパラッパラッパー」
櫻丼「懐かしいな」
リーダー「チェケラッチョ、お前ビーフカレーとポークカレーどっち派だよパッパップパップ」
櫻丼「これバトルなのか?普通に質問だろそれ。YO、どっちだっていいさ、愚問だろ食いもん、ならなんだっていいさ、生コンだって飲み込むさ、ダイバーシティー飲み込めんオワコンのお前と違いポーグカレーだって平らげる格の違い見せつける、チ、チ、チェックワンツー、チェックしろエンドロールケツまで、チ、チ、チャゼル、おまえ、そういうとこや↓ぞ⤴︎」
「「「「おお〜〜」」」」
櫻丼「やかましいわ!!」